公開日
2025/03/11更新日
2025/04/26
近年、フリーランスやIT業界での業務委託が増加する中で、「請負契約」と「準委任契約」という2つの契約形態についての理解が重要になってきています。本記事では、これらの契約の違いと特徴について、わかりやすく解説していきます。
請負契約とは
基本的な特徴
請負契約は、仕事の完成を約束する契約形態です。請負人は、発注者から依頼された仕事を完成させる義務を負います。この契約の最大の特徴は、成果物の完成が契約の目的となることです。請負人には仕事の進め方について大きな裁量が与えられる一方で、完成物に対する瑕疵担保責任が発生します。
報酬と責任
報酬は主に仕事の完成に対して支払われることになります。請負人は成果物の完成に対して責任を負い、約束した品質基準を満たす必要があります。
代表的な活用例
具体的な例として、建設工事の施工やWebサイトの制作、システム開発、商品の製造などが請負契約として行われることが一般的です。これらの業務では、明確な成果物の完成が求められるため、請負契約が適していると言えます。
準委任契約とは
基本的な特徴
準委任契約は、事務処理を任せる契約形態として知られています。受任者は、善管注意義務をもって業務を遂行する義務を負います。この契約では、業務遂行のプロセスが重視され、成果の保証よりも適切な業務遂行が求められます。
報酬体系
報酬は主に業務遂行の対価として支払われ、多くの場合、月額や時間単位での支払いが一般的です。業務の進行に応じて柔軟に調整できる特徴があります。
一般的な適用業務
システムの運用・保守やコンサルティング業務、顧問契約、技術支援などは、準委任契約で行われることが多い業務の例です。これらの業務は、継続的な関わりや専門知識の提供が重要となるため、準委任契約が適しているとされています。
両契約の主な違いと選択のポイント

契約目的の違い
請負契約と準委任契約の最も大きな違いは、契約の目的にあります。請負契約では仕事の完成が目的となるのに対し、準委任契約では事務処理の遂行自体が目的となります。
責任範囲の相違
この違いは責任の範囲にも影響し、請負契約では完成物に対する瑕疵担保責任が発生しますが、準委任契約では善管注意義務の範囲内での責任となります。
選択の判断基準
契約形態の選択には、業務の性質を十分に考慮する必要があります。成果物が明確に定義でき、完成までの工程が予測可能な場合は請負契約が適しています。一方、成果を具体的に特定できない継続的な業務や、発注者との緊密な協力が必要な場合は、準委任契約が望ましいでしょう。
リスク管理と実務上の注意点
リスク管理の重要性
契約形態の選択は、リスク管理の観点からも重要です。請負契約では成果物の完成リスクを請負人が負うため、見積もりの段階で十分な検討が必要です。
コスト管理の違い
コストについても、請負契約では原則として見積額が固定されますが、準委任契約では工数に応じて変動する可能性があります。
法的責任の考慮
法的責任の面では、請負契約における瑕疵担保責任と、準委任契約における善管注意義務の遵守が特に重要となります。契約締結前に、これらの責任の範囲について十分な理解と合意を得ておくことが望ましいでしょう。
請負契約のメリットとデメリット
発注者側のメリット
発注者側のメリットとしては、まず成果物の品質や完成時期について明確な約束を取り付けられることが挙げられます。予算も固定化されるため、コストの見通しが立てやすいという利点もあります。また、業務の進め方について細かい指示を出す必要がないため、管理工数を抑えることができます。
発注者側のデメリット
デメリットとしては、契約後の仕様変更が難しく、変更する場合は追加コストが発生することが多い点が挙げられます。また、成果物の品質基準や納期について綿密な取り決めが必要となるため、契約準備に時間とコストがかかることも考慮しなければなりません。
請負人側の視点
請負人側から見ると、作業の進め方に裁量があり、効率的な業務遂行が可能というメリットがあります。また、工夫次第で予定より早く完成させることで利益を増やせる可能性もあります。しかし、成果物に対する瑕疵担保責任を負うため、リスクも大きくなります。予期せぬ問題が発生した場合でも、定額での契約が一般的なため、追加コストを請求しにくいというデメリットもあります。
準委任契約のメリットとデメリット
発注者側のメリット
発注者側のメリットとして、まず業務の進行に応じて柔軟な指示や方向性の調整が可能という点が挙げられます。要件が明確でない段階でも契約を開始でき、業務を進めながら詳細を詰めていけることも大きな利点です。また、業務の質や量に応じて契約内容や報酬の見直しが比較的容易です。
発注者側のデメリット
デメリットとしては、成果物の完成や品質について保証が得られにくい点があります。また、受任者の業務遂行を管理・監督する必要があるため、発注者側の管理工数が増加する傾向にあります。報酬も時間や工数に応じて変動するため、コストの予測が難しくなる可能性があります。
受任者側の視点
受任者側から見たメリットは、業務量に応じた報酬が得られ、予期せぬ事態が発生した場合でも、適切な申し出により追加報酬を得られる可能性が高いことです。また、成果に対する瑕疵担保責任を負わないため、リスクを抑えられます。一方でデメリットとしては、発注者からの指示や要望に柔軟に対応する必要があり、業務の効率化による利益の増加が見込みにくい点が挙げられます。また、継続的な関係性が重視されるため、発注者との良好なコミュニケーションの維持が必須となります。
まとめ

請負契約と準委任契約は、それぞれの特徴と目的に応じて適切に使い分けることが重要です。業務の性質や目的、リスク管理の観点から慎重に契約形態を選択することで、円滑な業務遂行が可能となります。また、契約締結前にこれらの違いを十分に理解し、適切な契約形態を選択することで、将来的なトラブルを防ぐことができます。