公開日
2025/04/11更新日
2025/06/11
インボイス制度に登録したものの、いつまでに消費税を支払うのか、納税のやり方がわからない、といった悩みを持つ個人事業主は少なくありません。消費税の支払いを適切に行うには、納税期限や計算方法を正しく理解しておくことが重要です。
本記事では、インボイスにおける消費税の支払方法や計算・納税のやり方について解説します。
確定申告における消費税納税の基本

インボイス制度に登録した事業者は、課税事業者として消費税を納める義務があります。まずは、確定申告における消費税納税の基本をおさらいしましょう。
- 確定申告と同時に消費税の計算を行う
- 事業所得と消費税を分けて申告する
確定申告と同時に消費税の計算を行う
消費税の申告・納税は、確定申告と同時に行います。所得税と同じく、申告期限は毎年3月ですが、消費税の申告期限は3月31日までとなっている点に注意が必要です。申告が遅れると延滞税が発生する可能性があるため、スケジュールをしっかり確認しておきましょう。
消費税の計算方法には、20%特例法式・簡易課税方式・原則課税(一般課税方式)の3種類があります。詳しい計算方法については、「インボイスにおける消費税の計算方法」をご確認ください。
事業所得と消費税を分けて申告する
確定申告では、事業所得と消費税を分けて申告する必要があります。所得税の計算と消費税の計算は別々に行われるため、それぞれの申告書を適切に作成することが大切です。
事業所得は、売上から必要経費を差し引いた金額をもとに計算され、所得税の対象となります。申告方法は青色申告と白色申告の2つです。確定申告のやり方については、以下の関連記事をご確認ください。
消費税は、売上で受け取った「預かった消費税」から、仕入れなどで支払った「支払った消費税」を差し引いて納税額を算出します。この計算は、確定申告時に行い、消費税申告書を作成して税務署に提出します。事業所得とは別の申告になるため、混同しないよう注意が必要です。
関連記事:フリーランスエンジニアの確定申告の手順を徹底解説!青色・白色申告のやり方や経費にできるものは?
インボイス制度における消費税の納税義務が発生するタイミング
インボイス制度に登録すると、事業者は消費税の納税義務を負うことになります。しかし、いつから納税義務が発生するのかは事業者の状況によって異なります。
- 免税事業者がインボイスに登録したとき
- 課税売上高が1,000万円を超えたとき
- 資本金や出資金が1,000万円以上のとき
消費税の納税義務が発生するタイミングを見ていきましょう。
免税事業者がインボイスに登録したとき
免税事業者がインボイス発行事業者として登録した場合、登録日の属する課税期間(通常は1月1日から12月31日までの1年間)から消費税の納税義務が発生します。
例えば、2024年10月1日からインボイス登録をした場合、2024年10月1日~12月31日分の消費税を2025年3月31日までに申告・納税する必要があります。
なお、免税事業者が登録後にすぐに廃業した場合でも、登録期間に発生した消費税は納めなければなりません。
課税売上高が1,000万円を超えたとき
消費税法では、「基準期間(2年前)の課税売上高が1,000万円を超えた場合、翌々年から課税事業者になる」と定められています。例えば、2023年の課税売上高が1,200万円だった場合、2025年1月1日から課税事業者として消費税を納める必要があります。
なおこれは、インボイス制度の登録の有無に関係ありません。売上が拡大することは事業の成長にとって喜ばしいことですが、消費税の納税義務が発生するので注意しましょう。
資本金や出資金が1,000万円以上のとき
法人を設立する際、資本金または出資金が1,000万円以上の場合は、設立初年度から消費税の納税義務が発生します。個人事業主が法人化する際には、特に注意が必要です。
通常、法人の消費税の納税義務は「基準期間(前々事業年度)の売上高1,000万円以上かどうか」で判断されます。
しかし、新設法人の場合は前々年度が存在しません。そのため、資本金1,000万円以上で法人を設立した場合、消費税を納めるだけの経済規模があるとみなされ、設立初年度から課税事業者となるのです。
インボイスにおける消費税の支払いはいつ?納税時期は?
インボイス制度に登録した事業者は、消費税を適切に計算し、決められた期日までに納税する必要があります。消費税の納税時期は、事業者の売上規模や納税方式によって異なりますが、基本的には年に1回の確定申告時に納めるのが一般的です。
- 通常の申告の納税時期は年に1回
- 中間申告の納税時期は消費税で変わる
通常の申告の納税時期は年に1回
消費税の納税は、通常の確定申告時に年に1回行います。原則として、1年間の売上や経費を集計し、確定申告と同時に消費税額を納税します。
所得税の確定申告期限は毎年3月15日までですが、消費税の確定申告・納税期限(個人事業主の場合)は毎年3月31日までです。
通常の確定申告では年に1回の納税で済みますが、売上が大きくなると中間申告が必要になるため、次の項目で詳しく説明します。
中間申告の納税時期は消費税で変わる
前年度の消費税額が48万円以上だった場合、年に1回の納税に加えて中間申告が義務付けられます。中間申告とは、消費税の負担を分散するために、1年の途中で前払いする制度です。消費税額に応じて、中間申告の回数が異なります。
前年度の消費税額 | 中間申告の回数 | 申告・納税時期 |
48万円未満 | なし(年1回の申告のみ) | 3月31日まで |
48万円以上400万円以下 | 年2回(半期ごと) | 8月・3月 |
400万円超 | 年3回(4カ月ごと) | 8月・11月・3月 |
4,800万円超 | 年11回(月ごと) | 毎月(1~3月分は5月末) |
インボイスにおける消費税の計算方法

インボイスにおける消費税の計算方法は、主に以下の3つです。
- 20%特例法式
- 簡易課税方式
- 原則課税(一般課税方式)
各計算方法の特徴を理解し、自身の事業に適した方法を選ぶことが重要です。それぞれの計算方法について紹介します。
20%特例法式
20%特例方式は、インボイス制度の導入に伴い、免税事業者から課税事業者になった小規模事業者向けに設けられた特例措置です。2023年10月1日から2026年9月30日までの課税期間のみ適用可能です。
20%特例法式は、売上にかかる消費税額の20%のみを納税します。例えば、年間の課税売上が500万円の場合、通常の消費税(10%)は50万円となります。しかし、20%特例方式を適用すると、「50万円 × 20% = 10万円」のみを納税すればよいことになります。
20%特例方式は、主にフリーランスや小規模事業者向けの救済措置として有効ですが、適用期間が終了した後の納税計画も考慮する必要があります。
簡易課税方式
簡易課税方式は、年間売上が5,000万円以下の事業者が選択できる消費税の計算方法で、仕入税額控除を簡略化できるのが特徴です。業種ごとに決められた「みなし仕入率」を適用することで、消費税額を簡単に計算できます。
簡易課税方式を適用する場合は、事前に税務署へ「簡易課税制度選択届出書」を提出する必要があります。簡易課税方式の計算方法は、以下の通りです。
消費税額 = 売上にかかる消費税 -(売上にかかる消費税 × みなし仕入率) |
なお、みなし仕入率は以下のように設定されています。
業種 | みなし仕入率 |
第一種(卸売業) | 90% |
第二種(小売業・農業・林業・漁業の飲食料品) | 80% |
第三種(製造業・農業・林業・漁業の飲食料品以外など) | 70% |
第四種(飲食業) | 60% |
第五種(運輸通信業、金融・保険業などのサービス業) | 50% |
第六種(不動産業) | 40% |
課税売上が500万円の小売業の場合は、以下のように計算します。
課税売上 500万円 × 10%(消費税)= 50万円控除額 = 50万円 × 80%(みなし仕入率)= 40万円納税額 = 50万円 - 40万円 = 10万円 |
簡易課税方式は、業種や経費の割合によって向き不向きがあるため、自分の事業に適しているか事前に確認しましょう。
原則課税(一般課税方式)
原則課税方式は、売上にかかる消費税から、仕入れや経費で支払った消費税を差し引いて納税額を計算する方法です。通常の消費税計算方法であり、課税売上高が5,000万円を超える事業者はこの方式を選択する必要があります。
原則課税(一般課税方式)の計算方法は、以下の通りです。
消費税額 = 売上にかかる消費税 - 仕入や経費にかかる消費税 |
原則課税方式では、売上に標準税率(10%)と軽減税率(8%)が適用される場合、それぞれを分けて計算する必要があります。
標準税率(10%)の売上が120万円、軽減税率(8%)の売上が60万円の場合の計算方法を見ていきましょう。
標準税率(10%)の売上120万円 × 100 ÷ 110 × 10% = 109,090円(納税すべき消費税・標準税率分) 軽減税率(8%)の売上60万円 × 100 ÷ 108 × 8% = 44,444円(納税すべき消費税・軽減税率分) 合計消費税額109,090円 + 44,444円 = 153,534円(売上にかかる消費税の合計) |
原則課税方式では、仕入れや経費にかかった消費税を差し引きできます。例えば、標準税率(10%)の仕入れが50万円、軽減税率(8%)の仕入れが30万円あった場合、計算方法は以下の通りです。
標準税率分: 50万円 × 100 ÷ 110 × 10% = 45,454円 軽減税率分: 30万円 × 100 ÷ 108 × 8% = 22,222円 合計仕入税額控除45,454円 + 22,222円 = 67,676円(仕入税額控除額) |
売上にかかる消費税から、仕入税額控除を差し引いた額が実際に納める消費税となりますので、「153,534円 - 67,676円 = 85,858円」が納税すべき消費税の最終額です。
インボイスにおける消費税の支払(納税)方法
インボイス制度における消費税の納税方法は、複数の選択肢があります。事業者は自身の状況に合った支払方法を選びましょう。
- 銀行窓口での納税
- インターネットバンキング(e-Tax)での納税
- ダイレクト納税
- クレジットカード納税
- コンビニ納税
- 口座振替での納税
銀行窓口での納税
銀行や郵便局の窓口で納税する方法です。税務署から送付された納税書を使用し、指定された金融機関で納税を行います。銀行窓口で納税するメリット・デメリットは、以下の通りです。
メリット | 直接手続きできるため安心感がある窓口で確認ができる |
デメリット | 窓口の営業時間が決まっている手続きに時間がかかる |
インターネットバンキング(e-Tax)での納税
国税電子申告・納税システム(e-Tax)を利用し、インターネットバンキング経由で納税する方法です。まずは、e-Taxにログインし、納税情報を入力します。
納税情報を入力後、インターネットバンキングで納税手続きを進め、支払い完了後に確認メールが来れば納税完了です。インターネットバンキング(e-Tax)で納税するメリット・デメリットは、以下の通りです。
メリット | 24時間いつでも納税できる窓口に行く必要がない |
デメリット | インターネットバンキングに契約する必要があるシステムの操作に慣れていないと手間がかかる |
ダイレクト納税
e-Taxを通じて、登録した口座から直接納税する方法です。まずは、e-Taxでダイレクト納税の申請を行います。指定の口座情報を登録し、期日になれば自動で引き落とされ納税完了です。ダイレクト納税で納税するメリット・デメリットは、以下の通りです。
メリット | 24時間いつでも手続きできる納税の手間を省ける |
デメリット | 事前に口座登録する必要があるインターネット環境が必要になる |
クレジットカード納税
クレジットカードを利用してインターネット上で納税する方法です。まずは、「国税クレジットカードお支払サイト」にアクセスします。
必要情報を入力し、クレジットカードで納税すれば完了です。クレジットカードで納税するメリット・デメリットは、以下の通りです。
メリット | クレジットカードのポイントが貯まる高額な税額を分割払いやリボ払いで分割できる |
デメリット | 決済手数料がかかるクレジットカードの利用限度額によっては納税できない可能性がある |
コンビニ納税
コンビニエンスストアで納税する方法です。e-TaxでQRコード付きの納付書を発行します。その後、コンビニの端末またはレジで支払いすれば納税完了です。
コンビニで納税するメリット・デメリットは、以下の通りです。
メリット | 24時間納税ができるコンビニに用事があるときに一緒に支払える |
デメリット | 30万円を超える納税には対応していない現金払いしか支払えない |
口座振替での納税
税務署に申請し、登録した口座から自動で引き落としされる納税方法です。事前に「預貯金口座振替依頼書」を税務署に提出します。期日になれば、指定口座から自動引き落としされ納税できます。
口座振替で納税するメリット・デメリットは、以下の通りです。
メリット | 手続きが一度で済むため手間が少ない納付忘れを防げる |
デメリット | 口座残高不足の場合は納税が完了しない事前に手続きを済ませておく必要がある |
個人事業主が確定申告から消費税を支払うまで注意点
確定申告は単に収支を報告するだけでなく、適切な帳簿管理や期限内の納税、納税資金の確保などが必要です。これらの点をしっかり押さえておくことで、円滑に納税ができます。
- 確定申告前に帳簿管理を徹底する
- 期限内に消費税を納税する
- 納税資金を確保しておく
確定申告前に帳簿管理を徹底する
確定申告における消費税の計算を正確に行うためには、帳簿管理が非常に重要です。消費税は売上や仕入れに基づいて計算されるため、日々の取引内容を詳細に記録し、税額を正しく算出することが求められます。
特に、インボイス制度が導入されることで、適格請求書の保存が義務化され、適切な帳簿管理が一層重要になっています。
帳簿管理が徹底されていれば、確定申告の際にスムーズに消費税の計算ができるだけでなく、万が一税務調査が行われた場合でも、証拠資料として正しいデータを提出することが可能です。
期限内に消費税を納税する
確定申告後、消費税を納税する際は期限を守る必要があります。消費税の納税期限は通常、確定申告の締め切り日から2ヶ月以内です。
納税が遅れると延滞税が発生する可能性があります。したがって、期限内に正確な金額を納税することが求められます。
納税資金を確保しておく
売上が増加している年や経費が大きい年には、納税額が予想以上に高くなることがあります。そのため、納税資金をあらかじめ確保しておくことが重要です。
納税資金を確保するには、事前に納税額を見積もることが大切です。消費税額は、売上に基づいて計算されるため、過去の実績を参考にして、納税額を予想できます。これを基に、毎月一定額を積み立てておくと安心です。
また、別口座で管理することもポイントの一つです。納税用の資金は、個人の生活費と混同しないように、別の口座に分けて管理することをおすすめします。これにより、納税時に急に資金が不足することを防げます。
インボイスにおける消費税の支払いに関するよくある質問

インボイスにおける消費税の支払いに関するよくある質問を見ていきましょう。
- インボイス登録事業者は必ず消費税を納める必要がありますか?
- 消費税を納税する期限を過ぎるとどうなりますか?
- 個人事業主の課税期間はいつですか?
インボイス登録事業者は必ず消費税を納める必要がありますか?
インボイス登録事業者は、必ず消費税を納める必要があります。免税事業者として登録している場合、年間売上高が1,000万円未満であれば基本的には消費税を納める必要はありません。
しかし、インボイス登録を行うと、消費税の申告・納税義務が発生するため、インボイス登録をした時点で、免税事業者でも消費税の納税義務が生じることになります。
消費税を納税する期限を過ぎるとどうなりますか?
消費税の納税期限を過ぎると、延滞税や加算税が課される可能性があるため注意が必要です。
消費税の納税期限は、通常、確定申告を行った日の翌月末日までです。これを過ぎると、延滞税が発生します。延滞税は、納税期限を過ぎてから納税した額に対して加算されるもので、納税額が増加します。
個人事業主の課税期間はいつですか?
個人事業主の課税期間は、基本的には事業年度となり、通常は1月1日から12月31日までの1年間です。多くの個人事業主はこの期間が課税年度となります。確定申告は翌年の3月15日までに行う必要があります。
まとめ
インボイスにおける消費税の支払方法や計算・納税方法について紹介しました。免税事業者でもインボイス登録を行うと消費税の申告・納税義務が生じます
納税義務を全うするためにも、納税期間や適切な計算方法を把握しておくことが重要です。